記者会見:厚生労働会・外国特派員協会2017年7月19日

日本を愛し、こどもたちに愛されたニュジーランド青年の死

 ニュージーランド生まれの英語教師、ケリー・サベジさんが、
神奈川県の大和病院で、「暴れてもいないのに」「暴れる可能性がある」と、
家族の反対を押し切って身体拘束されました。

 ケアが貧しいためか、仙骨部に9センチもの褥瘡ができ、
10日目の夜、心肺停止状態で看護師に発見されました。  そして、搬送された市立大和病院で死を宣告されました。27歳でした。

 ご遺族と、身体拘束問題の第一人者、長谷川利夫教授の記者会見が、
19日午後3時から厚生労働省内の記者クラブで、
午後4時半から外国特派員協会で行いました。

厚生労働記者会の記者会見 2017年7月19日午後3時

 本日は、「精神科医療の身体拘束を考える会」の設立記者会見にお集まり頂き、有難うございます。
私は、東京にあります、杏林大学教授の長谷川利夫と申します。

 皆さんは、「身体拘束」というものをご存じでしょうか?
(実際の拘束具を記者に見せる)
これが、実際に身体拘束を行う器具です。
(実際に身体拘束をされている写真を見せる)
これを身体に装着するとこのようになります。
身動きを取ることはほとんどできません。
とても苦しい状態になります。
人権上も大きな問題があります。
日本の精神科病院の状況をお知らせします。
日本の精神科病院には、29万人の人たちが入院しています。
その内、20万人以上が1年以上入院し続けている人たちです。
驚きませんか?

 日本全体の病院の病床数は、150万床です。つまり、日本全国の病床の5つに1つは、精神科のベッドです。
1960年代、欧米では、病院中心の精神医療から、地域中心の精神医療に変えていった時に、日本は逆に精神病床を増やしていったのです。その結果、2017年現在も1000を超える精神科病院に多くの長期入院患者がいます。つまり、日本の精神科医療は未だに、「隔離収容政策」から脱していないのです。
しかも、精神科病院に入院する人の平均在院日数は、約280日です。

身体拘束を受ける人はこの10年で2倍になった

 日本においては、このような異常な精神医療の状況下で、隔離や身体拘束が多く用いられています。
 先ほど、日本には29万人、つまり約30万人の人が精神科病院に入院していると言いましたが、国の最新のデータでは、このうち、隔離を受けている人が1万人、身体拘束を受けている人も1万人いることがわかっています。2万人に人が隔離や身体拘束を受けているのです。今、記者会見をしているこの瞬間も。
 精神科病院の中で身体拘束を受ける人の数はここ10年で2倍にもなりました。

身体拘束での死亡事件は、起こるべくして起きた

 私自身は、精神科医療の身体拘束をテーマに2010年に論文を書き、博士の学位を取得しました。
 2013年に急増しつつある身体拘束に警鐘を鳴らす意味も込めて、『精神科医療の隔離・身体拘束』を上梓しました。その後、精神科医療での隔離や身体拘束の急増問題について、様々な所で講演をするなどして縮減を訴えてきました。

 しかし、縮減どころか、隔離も身体拘束も異常な増加を続けています。
 サベジさん一家、千葉さん一家に起こってしまったことは、このような日本の精神医療の状況下、起こるべくして起きたのです。

 

2つのお願いがあります

 主催者を代表して、2つお願いがあります。
 1つは、どうか、サベジさん、千葉さんに起こった悲劇に対して、無念にも亡くなっていったサベジさん御子息、千葉さん御子息、その残された遺族に対して、どうか心を寄せてください。
 そして、もう1つは、どうかこの悲劇を、スキャンダラスな「事件」ということでなく、社会における様々な構造的な問題によって引き起こされていることを理解し、その解決に向けて共に考えて欲しいのです。
 私たちが「精神科医療の身体拘束を考える会」を立ち上げるのは、まさに、日本の精神医療の問題を市民、国民と共に考え、解決していくためなのです


悲劇を繰り返さないために

会の方針は以下の通りです。

◆私たちは、身体拘束が人の尊厳を傷つけ、命まで奪いかねない非人道的なものであるか共通の認識をもつ。 
◆身体拘束によって苦しめられた方々からの話を多く収集し、その実態を社会に知らせる。
◆身体拘束実施過程の可視化など、身体拘束が適切に行われているか事後に検証できるシステムの構築を目指す。
◆不必要な身体拘束をなくし、その実施を縮減していくことを目指し、広範な市民と連携していく。

 会を立ち上げ、今、この瞬間も日本の精神科病院の中で行われている隔離や身体拘束を減らし、悲劇を繰り返さないためには、今日お集まりの第一線のメディアの方々のこの問題への深い理解が欠かせません。私たちはその理解を進めていくために力を尽くすことを惜しみません。
 今日を機に、どうか末永くお付き合い頂けることを心から願っています。

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長谷川利夫教授の記者会見原稿 ダウンロード
長谷川利夫の記者会見原稿.pdf
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兄パトリックさんの記者会見発言 ダウンロード
「弟ケリーの死における不適切行為の根拠に関して」
兄パトリックさんの記者会見発言.pdf
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Change.org 精神科医療における身体拘束の状況の改善を求める署名 End long-term restraint in psychiatric care

署名へのご協力と拡散をお願いします
宛て先  安倍晋三内閣総理大臣殿 および 崎恭久厚生労働大臣殿

Alliance against physical restraint in psychiatric care
精神科医療の身体拘束を考える会

短縮URL   https://goo.gl/2x6tdu


外国特派員協会 記者会見 YouTube


以下、遺族の発言、質疑など続く(準備中)

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