「精神科医療の身体拘束を考える会」設立趣旨文

                                                2017 年7 月19 日
 「身体拘束」は、患者の手や足を専用の道具でベッドなどにくくりつけることである。身体拘束による身体的苦痛、精神的苦痛は大きくその実施には慎重さが求められるが、入院患者が減少し続けるなか、身体拘束を受ける患者が増え続け、国の最新のデータでは、精神科で身体拘束を受ける人は2014年調査日に10,682人に達し、その数はこの10年で2倍以上にもなった。杏林大学の長谷川の全国11病院の調査によれば、身体拘束の平均実施日数は96日と3カ月以上にもなっている。
 精神科医療の中では、精神保健指定医が患者を「多動又は不穏が顕著」と判断すれば身体拘束を行うことが可能になっている。しかし本人からすれば自分を落ち着かせようとしているのに身体拘束をされてしまうこともある。また、診察場面で落ち着いていても当然のように身体拘束され、本人や家族が驚くという話も多い。転倒を防止するためといった理由で一日中身体拘束をしていることも多い。身体拘束を懲罰的に使用している例も後をたたない。入院する人は原則身体拘束からスタートすることをルーチンにしている病院もある。
 このような中、身体拘束によって尊厳を失われ、最悪の場合、命を失われてしまうことすらある。このような日本の精神医療の状況を看過することはできない。私たちは、実際に身体拘束を受け者、身体拘束により命をなくした家族、身体拘束を減らすための諸活動を行っている者などから構成され、以下の活動を行っていく。

◆私たちは、身体拘束が人の尊厳を傷つけ、命まで奪いかねない非人道的なものであるか共通の認識をもつ。
◆身体拘束によって苦しめられた方々からの話を多く収集し、その実態を社会に知らせる。
◆身体拘束実施過程の可視化など、身体拘束が適切に行われているか事後に検証できるシステムの構築を目指す。
◆不必要な身体拘束をなくし、その実施を縮減していくことを目指し、広範な市民と連携していく。


呼びかけ人:
   代表:長谷川利夫(杏林大学教授) 浅野史郎(元宮城県知事) 堂本暁子(元千葉県知事)
   立岩真也(立命館大学教授) 
斎藤環(筑波大学教授)  池原毅和(弁護士) 佐々木信夫(弁護士)

   岸田貴志(弁護士) 田中とも江(看護師) 大熊一夫(ジャーナリスト)
   マーサ・サベジ(遺族) 澤田優美子(当事者) 長谷川唯(立命館大学研究員)
   認定NPO法人DPI日本会議 NPO法人日本障害者協議会JD

   NPO法人全国精神障害者地域生活支援協議会(あみ)
   公益社団法人全国精神保健福祉会連合会(みんなねっと) 全国「精神病」者集団

賛同団体:認定NPO法人大阪精神医療人権
センター 大阪精神障害者連絡会(大精連)ぼちぼちクラブ 

   NPO法人こらーるたいとう